舞台『野鴨』で感じたこと
「正しいことを伝えること」が、果たして本当に幸せなのか。
答えを出そうにも出せないテーマ。
イプセンの名作『野鴨』を観劇しました。 (って、もう大千穐楽から一ヶ月以上も経ってしまったけど)
藤ヶ谷くんが、また“ヤバい”役をやるぞ…!
と盛り上がった今年の5月。
本当に“ヤバい”奴だった。
Taisuke Fujigaya of #KisMyFt2 dons his 19th century costume as Gregers Werle for the opening of Henrik Ibsen's #Vildanden!
— Johnny & Associates (@johnnys) 2022年9月4日
"The other day, I had a nightmare that I forgot my lines, so if that happens during the show I hope my fans can help me out!"#JohnnysUpClose pic.twitter.com/uiO7cXC2QC
初日〜開演までの時間〜
2022年9月3日。
夕方までの仕事を終わらせて、初めて降り立つ「三軒茶屋」。
ここが噂の三軒茶屋!
はやる気持ちを抑えながら、キャロットタワーの中に掲示されているポスターの写真を撮ったり動画を撮ったり。
17:30ごろ、入場するため劇場前の列に並んでいると
「開演前のグッズ販売は締め切りました」というアナウンスが。
えーーーーーーー!?!?!?
声にこそ出さないけど、今ここに並んでる人みんなそう思ったよね? ね?!
開演前にグッズを買うのは諦め、幕間に買おうと心に決めました。
グッズ
パンフレット
19世紀。 作品の時代に合わせた重厚さと、その時代を思わせるような衣装。
藤ヶ谷くんの物難しそうな表情が作品の重さを感じさせる。
Tシャツ
ホワイト、カーキ、ネイビーの3色ある中で、ネイビー以外の2色ゲット。
しれっと会社にも着て行ったけど、予想外に「かわいいね!」と褒められて嬉しかった♡
あらすじ
豪商ヴェルレの息子グレーゲルス(藤ヶ谷太輔)は久しぶりに山にある工場から戻り、幸せな家庭生活を送っている親友ヤルマール(忍成修吾)に再会する。そこで父ヴェルレ(大鷹明良)の使用人だったギーナ(前田亜季)が、ヤルマールの妻になっていることを知り、ある疑惑が芽生える。
グレーゲルスとヤルマール二人の父親は、かつて工場を共同経営していたが、ヤルマールの父エクダル(浅野和之)はある事件の罪を一手にかぶり投獄され、その家族は没落してしまった。また、ヤルマールの妻ギーナは、父ヴェルレとただならぬ関係があった過去があり、その負い目から、父ヴェルレはヤルマール家に援助を与えていた。
そのささやかな家庭の幸福な風景は、嘘で塗り固められた土台の上に立っていた。友に真実を告げて、真の幸福な家庭を手に入れてほしいと願うグレーゲルスだったが…。(公式HPより)
初日の感想
「後ろから2番目の人、カッコいいな」
と思ったら、その人がまさにグレーゲルス(藤ヶ谷くん)だった。
これ、本当に冗談じゃなくて。
イプセンの古典作品とあって、どう始まるのか、どんな衣装なのか、いつ出てくるのか…。
予想できない内容だったので、こちらもかなり神経を使って観ていました。体が汗ばむぐらい。
ヴェルレ(グレーゲルスの父)、グレーゲルス、ヤルマール(グレーゲルスの友達)…の順で出てきた時、一瞬誰かわからないぐらいの感覚。
オールバックの髪に、品のある髭のお顔、真っ黒の燕尾服、ツヤッとしたエナメルの靴。 全然派手な登場ではないのに、グッと惹きつける力はさすが。 貴族に相応しい品の良さが溢れ出ていた…。
父にはすぐ反発するけど、逆に責められると子供のように怯える目。 震える手足。呆れる表情。動揺する息遣い。 声を発していなくても、その繊細な演技一つ一つで意味を捉えることができて、鳥肌が立つほどでした。
自分の「理想」を押し付けるときは本当に怖いぐらいの狂気を感じさせるのに、それがどこか美しくも見えて。
そして、セリフの量よ…!!
難しい台詞も噛むことなく、その迫力に何度も息を呑みました。 「ふ、ふ、ふふ藤ヶ谷くんこんなおっきな声出るの!?」とも思ったし(笑)。 途中から藤ヶ谷くんであることを忘れるぐらい。 幕間には集中力が一旦解放され、どっと疲れがやってきた。
ヤルマールも超絶ヤバい
グレーゲルスの友人・ヤルマールは本当に可哀想だけど、この人もこの人で結構なヤバさ。 妻のギーナに働かせておいて、自分は「発明のため」とかなんだ言って堕落した生活を送るし。 気難しく、脆い性格だということが伝わってくる忍成さんの演技がまた狂気じみていて。
ヤルマールを崇拝するあまり正義を振りかざすグレーゲルスと、グレーゲルスの言動により簡単に幸せを壊されるヤルマールの姿が、見ていて本当に辛かった。
ギーナとセルビー夫人から見る「強い女性像」
辛い過去を抱えながらも、「私は過去を全部捨てた。」と言い張り、今の生活で幸せを築き上げたギーナはとても強い。 セルビー夫人もいろんな経験をして、「自分のしたいようにするのが一番いいと思うの」と言う。現代の女性達にも通じるたくましさ、強さが表現されていました。
世田谷パブリックシアター
「わ、狭い…!!!」が初めて劇場に入った時の感想です。3階まであるけど、キュッとコンパクトでどこかでも観やすい。
1階〜3階まで、いろんな座席から観ることができましたが、それぞれの良さがありました。
マチネはロビーに太陽の光が差し込むからとっても綺麗で何度も写真撮っちゃった(笑)。
藤ヶ谷くんが立った中ではパルコ劇場が一番好きだったんだけど、それと同じぐらい好きな劇場になりました。
「舞台は儚い」
だから、面白い。 藤ヶ谷くんがよく言う言葉。
観劇するたびに本当にそう思います。 同じセリフでも、その公演でしかない言い方、声量、視線の運び。座席によっても見え方が違うから今までにない発見もある。 もう二度と、全く同じものはない。 こちらも全身で、集中力を高めて観ることができたと思います。
お客様の心に何か棘を残したいし、僕を入り口にいろいろな演劇に出会ってほしい。そう思っていただける作品にしたいと思いますね。(『野鴨』パンフレットより)
藤ヶ谷くんが挑戦してくれることで、自分も新しい作品に出会えることが嬉しい。
心からそう思えた作品です。